[ねえ、本当に開けるの?]
怖がりながらも半分期待するように彼女の彩華が言う。しかし、彩華がいつも隠れてる髪を耳にかけてるのを見れば、口先では嫌だと言っておきながら心の奥では自分も開けたいのだと思ってるのが分かる。
この子はいつもなんやかんやわがままを聞いてくれる。
「いいだろ、ピアッサーのお金は俺が出したんだから」
先ほど買ったばかりの十六Gピアッサーを
二つ、手の中で遊ばせながら答える。
「部屋、この番号だから先入ってて、飲み物は?」
路上で開けるもんだと思っていたのだが、彼女はピアッサーを使う際は、叫ばないといけないのだと思っているのか「叫んでも良いとこで開けるの!」と言って聞かなかったため、カラオケに連れてこられている。
「お水で」
いつもならイチゴオレで! と返ってくるのに水と返ってくるあたり、やはり緊張しているのだろう。
少し強引だったかなと思い、水とイチゴオレのグラスを両手に持って部屋に持っていく。
両手が埋まってるため、小指でドアノブを回して苦労しながら部屋に入ると、絶望的な顔をした彩華が体育座りでうずくまっていた。
「ねえやっぱりやめようよ」
彩華が駄々をこね始める。この子はこうなったら長くなる。
「ええ、本当にいいの? おしゃれなピアスつけてみたいってずっと言ってたでしょ?」
いじわるに言うと「わかったよ」と観念したように認める。
ただ穴を開けたかった。彩華に俺がつけた傷をつけていて欲しいという理由でピアスを進めたのだ。だからピアッサーを買ってあげるよと言ったときは不思議そうにしてた。
「痛くしたら許さないから」
諦めた様子で髪をかけた耳をこちらに向け、目を瞑ってピアッサーを待つ。
「大丈夫だよ。痛くしないから」
自分が開けた時は痛くなかったからという適当な理由で、まるで何人も開けてきたかのように自信満々に言う。
「三、二、一で開けるからね」
「はい」
カウントダウンを始めたのだと勘違いした彩華が「びっくりさせないでよ」と理不尽に怒りながら答える。
「三、二…」
カチッとボタンを合わせるような、どこか拍子抜けな音がして、耳たぶに針が刺さる。
「え、え、今どうなってるの」
どうやらカウントダウンを守らなかったことには気が付かなかったらしい。不安そうな声が聞こえるが無視して作業を続ける。ここからが本題なのだ。
ピアッサーで耳を潰すように強く押す。しばらくすると無音でピアッサーから耳に穴を開けた針が外れ、今度こそ固定ピアスが完成する。
「終わったよ。痛くなかったでしょ」
「うん、痛くなかったよ」
先ほどまで怯えていたのが嘘かのように、耳たぶに銀色の針を光らせた彩華が上機嫌に答える。
「ねえ、今度ピアス買いに行こうよ」
すっかり元気を取り戻したようで、いつもの調子で話し始める。
「え、二つ目のピアッサー残ってるよ」
彩華から笑顔が消えた。
怖がりながらも半分期待するように彼女の彩華が言う。しかし、彩華がいつも隠れてる髪を耳にかけてるのを見れば、口先では嫌だと言っておきながら心の奥では自分も開けたいのだと思ってるのが分かる。
この子はいつもなんやかんやわがままを聞いてくれる。
「いいだろ、ピアッサーのお金は俺が出したんだから」
先ほど買ったばかりの十六Gピアッサーを
二つ、手の中で遊ばせながら答える。
「部屋、この番号だから先入ってて、飲み物は?」
路上で開けるもんだと思っていたのだが、彼女はピアッサーを使う際は、叫ばないといけないのだと思っているのか「叫んでも良いとこで開けるの!」と言って聞かなかったため、カラオケに連れてこられている。
「お水で」
いつもならイチゴオレで! と返ってくるのに水と返ってくるあたり、やはり緊張しているのだろう。
少し強引だったかなと思い、水とイチゴオレのグラスを両手に持って部屋に持っていく。
両手が埋まってるため、小指でドアノブを回して苦労しながら部屋に入ると、絶望的な顔をした彩華が体育座りでうずくまっていた。
「ねえやっぱりやめようよ」
彩華が駄々をこね始める。この子はこうなったら長くなる。
「ええ、本当にいいの? おしゃれなピアスつけてみたいってずっと言ってたでしょ?」
いじわるに言うと「わかったよ」と観念したように認める。
ただ穴を開けたかった。彩華に俺がつけた傷をつけていて欲しいという理由でピアスを進めたのだ。だからピアッサーを買ってあげるよと言ったときは不思議そうにしてた。
「痛くしたら許さないから」
諦めた様子で髪をかけた耳をこちらに向け、目を瞑ってピアッサーを待つ。
「大丈夫だよ。痛くしないから」
自分が開けた時は痛くなかったからという適当な理由で、まるで何人も開けてきたかのように自信満々に言う。
「三、二、一で開けるからね」
「はい」
カウントダウンを始めたのだと勘違いした彩華が「びっくりさせないでよ」と理不尽に怒りながら答える。
「三、二…」
カチッとボタンを合わせるような、どこか拍子抜けな音がして、耳たぶに針が刺さる。
「え、え、今どうなってるの」
どうやらカウントダウンを守らなかったことには気が付かなかったらしい。不安そうな声が聞こえるが無視して作業を続ける。ここからが本題なのだ。
ピアッサーで耳を潰すように強く押す。しばらくすると無音でピアッサーから耳に穴を開けた針が外れ、今度こそ固定ピアスが完成する。
「終わったよ。痛くなかったでしょ」
「うん、痛くなかったよ」
先ほどまで怯えていたのが嘘かのように、耳たぶに銀色の針を光らせた彩華が上機嫌に答える。
「ねえ、今度ピアス買いに行こうよ」
すっかり元気を取り戻したようで、いつもの調子で話し始める。
「え、二つ目のピアッサー残ってるよ」
彩華から笑顔が消えた。