「ネットにすら痕跡が残ってないんですよ」
そう話した男性は東京在住の会社員をしているOさん(34)。
三重県出身である彼は、お子さんのK君が懐かしい駄菓子を買ってきたことがきっかけで、ふととある駄菓子のことを思い出したという。
「先々月かな。小4になる息子が懐かしいものを持ってきたんです。ポン菓子ってあるじゃないですか、ニンジンのパッケージでお米とかに圧力かけて作るやつ」
七月某日、Oさんが仕事から帰宅すると、K君がリビングでポン菓子を食べていたのだそう。
その物珍しさからOさんとK君は駄菓子の話で盛り上がり、ちょうどK君の学校が夏休みを控えていた事もあって、Oさんは「夏休みの自由研究で駄菓子について調べてはどうか」という提案をしたそうだ。するとK君も乗り気になって、インターネットを駆使しながら自由研究を始めた。
「駄菓子なんて久しぶりだったので、とても懐かしい気持ちになりました。息子がパソコンで駄菓子について調べているのを後ろから見ていたのですが、出てくる名前がもう全部懐かしくて。つい僕が『昔はこんな駄菓子もあるよ』と横槍を入れそうになったりもしたんですが、そのたびに奥さんに怒られちゃって……///」
Oさんの口ぶりからは、K君の自由研究が非常に順調だったこと、何よりOさん一家の仲の良さが伺えた。
それから二週間ほど経ったある日、息子さんはOさんに研究の成果を発表したのだそうだ。
K君が広げたポスターの中には、まさにOさんが子どもの頃に食べた駄菓子が写真付きでまとめられていたのだという。中にはもう販売が終了したものもまとめられていて、Oさんは素直に関心したと語っている。
しかし、一通り読み終えて、Oさんは些細な違和感を覚えたそうだ。
「どれもこれも確かに懐かしかったんですけど、自分の記憶と照らし合わせて見てどうにも何か抜けてる気がしたんですよね。じっくり考えてみたら、『よーつんどる』がない、って気づいたんですよ」
「もう昔のことだったので完全に忘れていたんですが、子どもの頃は一番『よーつんどる』を食べていたんですよね。でも妻や息子に聞いても知らないっているんです。気になって調べてみたらネットにすら『よーつんどる』があったって痕跡がなくて」
Oさんの話では、少なくとも三重県にあるOさんの地元では『よーつんどる』という、ポン菓子のような穀物由来の駄菓子が売られていたという。
味はえびせんべいに近く、食感は食パンのようにふわふわとしているのだそうだ。名前の『つんどる』は三重の方言で『混んでいる、詰まっている』という意味なのだそうだ。
こういった地方限定で売られている『ローカル駄菓子』は全国各地に存在する。この『よーつんどる』もその一種だと思われるが、同郷の三重県出身であるOさんの奥さんや、同じく三重県出身の本コラムの取材スタッフも『よーつんどる』のことを知らなかった。
そこでOさんは、地元に住む母親に電話をかけたところ、確かに『よーつんどる』という駄菓子が売られていたと話した。
Oさんのお母様の話では、まだOさんが小さかった頃、家の近くに『真田商店』という駄菓子屋があって、Oさんはよくそこから『よーつんどる』を買っていたそうだ。
しかし現在では『真田商店』も閉店してしまい、『よーつんどる』も売っていないという。
「もうあまり覚えていないのですが、あの頃は他の駄菓子よりもそればかり食べていたのを覚えてるんです。こうして話している間にもまた食べたくなったきました。確かパッケージもプリントがしっかりしていたので、個人商店が出すようなお菓子ではないんと思うんです。もし僕以外にも覚えている人がいらっしゃいましたら、何か教えて頂けると嬉しいです」
本コラムでは、Oさんの『よーつんどる』のような「あの頃」についての記事を集めている。
以前として急速な広がりを続ける情報社会。その荒波の中を生き続ける私たち。たまには足を止めて懐かしいものや昔熱中していたことに想いを馳せてみると、新しい生活スタイルの発見につながったりするものだ。本コラム『あの頃』では引き続き、読者の皆さんの「あの頃」にまつわる投稿をお待ちしている。
(大人の生活情報サイト『LIFE POST』2020年6月更新記事、コラム『あの頃』掲載)
そう話した男性は東京在住の会社員をしているOさん(34)。
三重県出身である彼は、お子さんのK君が懐かしい駄菓子を買ってきたことがきっかけで、ふととある駄菓子のことを思い出したという。
「先々月かな。小4になる息子が懐かしいものを持ってきたんです。ポン菓子ってあるじゃないですか、ニンジンのパッケージでお米とかに圧力かけて作るやつ」
七月某日、Oさんが仕事から帰宅すると、K君がリビングでポン菓子を食べていたのだそう。
その物珍しさからOさんとK君は駄菓子の話で盛り上がり、ちょうどK君の学校が夏休みを控えていた事もあって、Oさんは「夏休みの自由研究で駄菓子について調べてはどうか」という提案をしたそうだ。するとK君も乗り気になって、インターネットを駆使しながら自由研究を始めた。
「駄菓子なんて久しぶりだったので、とても懐かしい気持ちになりました。息子がパソコンで駄菓子について調べているのを後ろから見ていたのですが、出てくる名前がもう全部懐かしくて。つい僕が『昔はこんな駄菓子もあるよ』と横槍を入れそうになったりもしたんですが、そのたびに奥さんに怒られちゃって……///」
Oさんの口ぶりからは、K君の自由研究が非常に順調だったこと、何よりOさん一家の仲の良さが伺えた。
それから二週間ほど経ったある日、息子さんはOさんに研究の成果を発表したのだそうだ。
K君が広げたポスターの中には、まさにOさんが子どもの頃に食べた駄菓子が写真付きでまとめられていたのだという。中にはもう販売が終了したものもまとめられていて、Oさんは素直に関心したと語っている。
しかし、一通り読み終えて、Oさんは些細な違和感を覚えたそうだ。
「どれもこれも確かに懐かしかったんですけど、自分の記憶と照らし合わせて見てどうにも何か抜けてる気がしたんですよね。じっくり考えてみたら、『よーつんどる』がない、って気づいたんですよ」
「もう昔のことだったので完全に忘れていたんですが、子どもの頃は一番『よーつんどる』を食べていたんですよね。でも妻や息子に聞いても知らないっているんです。気になって調べてみたらネットにすら『よーつんどる』があったって痕跡がなくて」
Oさんの話では、少なくとも三重県にあるOさんの地元では『よーつんどる』という、ポン菓子のような穀物由来の駄菓子が売られていたという。
味はえびせんべいに近く、食感は食パンのようにふわふわとしているのだそうだ。名前の『つんどる』は三重の方言で『混んでいる、詰まっている』という意味なのだそうだ。
こういった地方限定で売られている『ローカル駄菓子』は全国各地に存在する。この『よーつんどる』もその一種だと思われるが、同郷の三重県出身であるOさんの奥さんや、同じく三重県出身の本コラムの取材スタッフも『よーつんどる』のことを知らなかった。
そこでOさんは、地元に住む母親に電話をかけたところ、確かに『よーつんどる』という駄菓子が売られていたと話した。
Oさんのお母様の話では、まだOさんが小さかった頃、家の近くに『真田商店』という駄菓子屋があって、Oさんはよくそこから『よーつんどる』を買っていたそうだ。
しかし現在では『真田商店』も閉店してしまい、『よーつんどる』も売っていないという。
「もうあまり覚えていないのですが、あの頃は他の駄菓子よりもそればかり食べていたのを覚えてるんです。こうして話している間にもまた食べたくなったきました。確かパッケージもプリントがしっかりしていたので、個人商店が出すようなお菓子ではないんと思うんです。もし僕以外にも覚えている人がいらっしゃいましたら、何か教えて頂けると嬉しいです」
本コラムでは、Oさんの『よーつんどる』のような「あの頃」についての記事を集めている。
以前として急速な広がりを続ける情報社会。その荒波の中を生き続ける私たち。たまには足を止めて懐かしいものや昔熱中していたことに想いを馳せてみると、新しい生活スタイルの発見につながったりするものだ。本コラム『あの頃』では引き続き、読者の皆さんの「あの頃」にまつわる投稿をお待ちしている。
(大人の生活情報サイト『LIFE POST』2020年6月更新記事、コラム『あの頃』掲載)
地元長野だったんだけど三重にもあるんか……