zorozoro - 文芸寄港

10 千 田 MC

2024/05/21 17:01:56
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 僕が『ネタ帳①』というファイルを見つけたのは、蒸し暑くなり始めた部屋で一人。パソコンの延命処置をしている時だった。
 このパソコンを使い始めたのは約十一年前。父親から高校入学祝いとしてプレゼントされたのが出会いで、未だ僕と妹はそのパソコンを使い続けている。十一年前では高校生が使うのはもったいないほどのスペックだったので、あの時、親がどれだけ自分の高校入学を喜んでくれていたのかが伺えてくる。とはいっても、パソコン寿命というのは持って七年ほど。十一年前最前線を走っていたはずの僕のパソコンは、今や妹から「漬物石」と罵られるレベルまで落ちぶれてしまっていた。
 「漬物石」と言われる理由も何となくわかる。起動に五分。アプリを起動するのにも同様の時間がかかってしまうパソコンというのは、作業用としては致命的といわざるを得ないのだろう。ましては大学生である妹にとっては尚更だ。「画面もマウスポインターも動かないくせに、さも頑張っているかの様にビジーカーソルだけ動き続けているのに腹がたつ」と怒りをぶつける妹を見ていると、自分のせいでもないのに少し申し訳ない気持ちになった。
 そんな低スペックパソコンを少しでも長持ちさせるには、余分な容量は一バイトたりとも残しておくわけにはいかない。「Cドライブにはデータを入れるな」というのが父の昔からの口癖で、今でもギリギリこのパソコンが持っているのは、きっとその教えの賜物なのだろう。しかし、それももう限界だ。もはやCドライブで消せるものなど、せいぜい数キロバイトのテキストデータぐらいしかなかった。だからいくら僕が時間を使ってデータを削除しようとも、この行為は結局、延命処置ぐらいにしかならないのだ。

 わかっていても我が家に一台しかないパソコンなので、誰かが整備をしないといけない。その日も『a』や『awawawaw』など、自分の性格を表すかのように雑に付けられたデータを僕は「Shift」「Delete」で淡々と処理していた。
 基本的に僕は、人に見せるようなデータでなければ適当に名前をつける。以前は『仮』や『無題』など、最低限意味のある言葉をタイトルにつけていたが、最近ではそれすらも億劫に感じていた。なので今ではキーボードのホームポジションの、特に自分が動かしやすい「a」や「w」を多用し、それらを組み合わせることで名前を作成している。
 だから、そんな僕がちゃんとした名前。しかも『ネタ帳①』などという、おそらく他人に見せないであろうデータに名前がついているのを見つけた時は、我ながら目を疑ってしまった。僕という人間にとって、必要ではないのにも関わらず名前をつけるという行為は耐え難いストレスの生まれる行為なのだ。意味のない「無」や「仮」の羅列の間に挟まっているのが、また一層自分では無いものが埋もれているかの様な気味悪さを僕に与えた。
 『ネタ帳①』に書かれた最後に開いた日時の欄を確認すると、2015年7月16日と書かれていた。今が2024年1月11日なので、これは今から九年と約半年前の日時になる。九年前というと、大体僕が高校二年生ぐらいの時になるだろうか。もし高校で作成した物で、かつ『ネタ帳①』という名前で作るとなれば、部活関係か、押し付けられた学校の実行委員の資料のどちらかになるだろう。
 どちらにせよ開かない事には判別のつけようがない。タイムカプセルを開けるような僅かにワクワクとした気持ちでファイルを開いてみると、そこには、「千。田中。口に卵。」や「10年後。手紙」など、意味不明な一文がびっしりと箇条書きにされていた。

 思わず口からため息が漏れた。これはまた、昔から治らない僕の悪い癖の一つなのだ。自分のことなのだから、ある程度キーワードのようなものが書かれていれば思い出せる。そうやって自分の記憶力を過信して、まるで中学生の英語の様に単語だけを並べメモ帳に記入する。この癖のせいで、おそらく僕は三桁に迫るレベルで物事を忘れているのだ。実際忘れていることすら忘れている為、あくまで怒られた回数から予想した回数ではあるが。
 しかしその中の一つ、「千。田中。口に卵。」は僅かに心当たりがあった。おそらくだが、これは高校で起きた「田中エッグ買収事件」のことを指しているのだろう。
 「田中エッグ買収事件」は高校一年の夏、クラスメイトの田中が口の中に含んでいた卵を女子に当てて号泣させた事件だ。田中はなぜ口の中に卵を含んでいたのか。後々聞いた話では、食堂で出た卵を口の中に含んで家まで持って帰るというゲームを仲間内でしていた様だ。ゲームなので、彼らはあの手この手でライバルたちを蹴落とそうとした。ある者は先生に密告をしてみたり、またある者はライバルの鼻をつまんで呼吸困難にさせてみたり。中学生がやる様なあまりにくだらないゲームなのだが、当の本人達は真剣そのものだった様だ。
 そうして迎えた放課後。唯一生き残った田中は、ライバルから総攻撃を喰らうこととなる。これまで様々な攻撃に耐えてきた田中であったが、全員からの笑わせ攻撃、という最初に思いつきそうな攻撃で彼はあっさりと陥落した。ゲラである彼にとって、笑わせ攻撃は何よりも効果のあるものだったのだろう。
 そして運の悪い事に、勢いよく吹き出された卵は円を描き、椅子に座っていた女子の顔面にぶつかってしまったのである。突然のクラスメイトの号泣に焦ったのだろう。田中は咄嗟に財布の中にあった千円札を女子に渡して「すまん、これで勘弁してくれ」と頭を下げ、結果この事件は「田中エッグ〝買収〟事件」となったのだ。勿論、服が汚れて泣いている訳ではないのでお金を渡してもしょうがないのだが、焦りからきた行動というのはいつだって意味不明で、不思議と見ているものを笑わせるものだ。
 「田中エッグ買収事件」はその面白さから、後に僕が僅かに改変し放送部のシナリオとして消化した過去がある。となると、やはりこの『ネタ帳①』は部活。つまり放送部の頃、ドラマ作成のため高校で起きた、あるいは使えると思った出来事を簡易的に書き留めたもので間違いないだろう。そうだとすると「10年後。手紙」は、アンジェラ・アキの『手紙 ~拝啓 十五の君へ~』から着想を得た「十年前の自分から手紙が来る」という僕が作ったシナリオのことを指しているのだろう。あれはあまりにも元ネタに寄りすぎた駄作ではあったが、やたら顧問からの受けが良かったので今でも覚えている。あの時期の五十代〜六十代には、あのような過去を振り返るような物語が刺さるのだろう。高校生の頃はよくわからなかった感情だが、今では少し、その気持ちもわかるような気がする。

 『ネタ帳①』に書かれた一文は全部で百を超えていた。せっかく①としたのに、②、③と分けずに①に全て書き込むところがいかにも僕らしいなと思った。そんな僕らしさは簡略化された一文にも現れており、最初は「10年後。手紙」と、簡略化されながらも僅かに意図が伝わるものであったのだが、下にスクロールするにつれて「川。爆」など全く理解できない物へと変化していった。ちなみに「川。爆」は、僕の友人である川野が、ポテトチップスの袋から爆弾を作っていた事を指していると思われる。このエピソードは元が強すぎた為、結局最後までシナリオに使われる事はなかった。
 「10 千 田 MC」は、そんな書きなぐられたメモ帳をスクロールした一番下に書かれていた。今まで全ての殴り書きを走馬灯の様に瞬時に想起していた僕だったが、ここにきて、まるですっと時が止まってしまったかの様に立ち止まってしまった。
 「千田」と言われれば、東京都江東区のあの地名が真っ先に頭に浮かぶ。数年前、興味本位で行った江東公園が、実家の秩父の公園に似ている気がして妙に居心地が良かったのを今でも覚えている。だけれども、高校時代千田に行った事はないし、そもそもその様な地名があるのを知ったのも東京に移り住んでからだ。
 そうなると人名だろうか? しかし「千田」という名前の知人に心当たりはなく、唯一付き合いで「千田学(ちだまなぶ)」という人物と話した事はあるが、間違いなく彼のことを指してはいないだろう。第一「川。爆」の様に、メモ帳の後半に書かれている人名は、皆一文字で示されていた。仮に千田を人名として捉えるのであれば、「千田」ではなく「千。田」と別々に考えるべきなのだろう。
 「MC」についても軽くネットで調べてみた。マスター・オブ・セレモニー。つまり司会者の略称。またはマインドコントロール。洗脳の略語と出てきた。マインドコントロールは物騒が過ぎるし、司会者をMCとするならば、僕は『司』と一文字で済ましてしまうだろう。
「うーん……」
 一度気になってしまったら、それを解消するまで他が全く手がつかなくなる僕にとって、「10 千 田 MC」は非常に大きな小骨となってしまった。「10 千」は「101000」であり、二進数の暗号文になっている。や、シンプルに千の田んぼの話なのではないか。など、いくつか仮説を立ててみたが、結局どれもしっくりとは来なかった。気がつくと僕は、まるで力尽きたボクサーの様にリビングの真ん中で仰向けになっていた。

 この事態を解消したのは、大学から帰ってきた妹だった。妹は帰ってくるなり僕に「そんな事してないで働け」と悪態をついてきた。半ば放心状態であった僕は、そんな妹の言葉をガン無視。藁にも縋る様な気持ちで「10 千 田 MC」について助けを求めた。ダメで元々のお願いだったのだが、意外な事に妹は「10 千 田 MC」に面白いぐらいに食いついてきた。
 元々、妹はこの手のミステリーや暗号の類が大好きなのだ。「頭が良い人間は、いつだってその頭を使う機会を探しているのよ」と、まるで名探偵みたいな事を僕が助けを求める度に言っていた。将来は探偵にでもなったらいいのに。そんな僕の呟きには「人の浮気を暴いて何が楽しいのよ」と夢のない事を言っていて、妹の成長を何となく感じた。
 妹は僕の話を一通り聞くとパソコンを奪い取り、そのままモニターを睨み始めた。僕はというと、その間なるべく邪魔にならない様正座で妹の解を待った。大体三分ほどだろうか、ちょうど足にピリピリとした痛みが走った辺りで、妹が一言「わかったけど、対して謎がある訳でもなくて面白くない」といった。そりゃそうだ。これは秘密結社が作った暗号文でも、頭の良い人間が作った謎解きでもない。僕のサボりの成れ果てでしかないのだから。
「しかし分かったんだな。教えてくれよ〝名探偵”」
 そんな僕の嫌味ったらしい言い方に、妹はまた不機嫌そうな顔をした。
「私にしてみれば、何であんたが分からないのか分からないけどね」
 悪態をつきながらも、妹は黒いミニバックをタンスの方に放り投げ、『ネタ帳①』を上にスクロールし始めた。結局のところ彼女もまた、名だたる名探偵と同じ様自分の知識を披露したくて仕方ないのだろう。

「まず、『10 千 田 MC』が『10。千。田。MC』って分けて考えるのは分かってる?」
「ああ、それは数十分前に僕も気づいた」
 「10 千 田 MC」をよく見ると、間に小さくスペースが開かれているのが分かる。それらに従うならば、「10。千。田。MC」と切り分けて考える必要があるのだろうと、そこまでは僕も辿り着いていた。
「さっきもいったけど、そこまで来て何であんたが分からないの? もしかして自覚ない?」
 妹の問いに、僕は顎に手を当てて「うーん」と考えているかのようなポーズをした。実際いくら考えても分からない事を分かっているため、ただ素振りをしているだけなのだが。しかし流石は名探偵。僕の形だけの素振りに気づいたのだろう、彼女は呆れた様に大きくため息をついた。
「まず。最初の二つ「10」と「千」に注目して。何かわからない?」
「……いや、特に」
 もう諦められているのか、妹は何も言わずそのまま話を続けた。
「『10』と『千』って同じ数字なのに、わざわざ漢数字と半角数字でわけられてるのよ。で、これは謎解きでもなんでもなくて、ただの兄貴の癖なのよね」
「癖? 僕の」
「そう。だから『何であんたが分からないの?』って聞いたのよ。ほら、例えばこの『千。田中。口に卵。』は漢数字だけど、『10年後。手紙』は半角数字になってるでしょ。こんな感じで、金額を書くときには漢数字。年号や日数を書く時は半角数字っていうのが、アンタの昔からの癖なのよ」
 思わず「うわっ」と声を上げそうになった。自分でも気づいていない癖、ましてはそれを妹に指摘されるとは。言われて見ると確かに心当たりがあり、癖とは自分ではわからないものなのだなと僕は思った。
「となると『10』は十年後、あるいはヶ月、日のどれか。もしかすると十時かもしれないけど、流石にそこまではわからないや。千は、間違いなく千円と事って考えていいと思う」
「田。MCは?」
「わからないけど、田は名前の可能性が高いと思うよ」
「どうして?」
「癖」
 また癖か。なんだか恥ずかしくなってきた。
「『千。田中。口に卵。』って、少し変じゃない? 日本語的に考えるのなら、田中君が口の卵をクラスメイトにぶつけて千円渡したんだから『田中。口に卵。千』の方が文脈的に合ってる気がする。これが兄貴の悪癖によって生まれたものなら、尚更日本語的に『田中。口に卵。千』とやりたくなると思うの。でも実際『千。田中。口に卵。』となってるところから、兄貴の文章の優先順位は、年と金>人名>内容になっているんだと思う。言葉によって文法の位置は変わるから、言うなればこれは『兄貴語』になるね」
「……あ!」
 そこまで説明されて、僕はやっと『10 千 田 MC』の正体に気がついた。確かに、これは私が高校の頃体験した「ネタ」の一つだったのだ。そしてそれはまだ、完成していない。
「MCに関してだけど、これはさっぱりなのよね。『兄貴語』的に考えるなら、おそらく内容に当たる部分だと思うのだけど。マスター・オブ・セレモニーでも、マインドコントロールでもないとなれば、一体……」
「いや、ありがとう。もう十分だ。」
 僕は椅子に放り投げられていた服を羽織り、画面の割れたスマートフォンをポケットに入れながらそう言った。妹の「分かったの?」という問いに答えず、リビングの取手に手をかけて、僕はこう言った。
「妹よ、ポテトは好きか?」

 三時間後。スマートフォンのひび割れた画面の真ん中は、午後七時二十五分を指していた。辺りは暗くなってきたというのに、未だ視界には様々な背丈の人間が現れては消え、現れては消えを繰り返していた。
「おう、待った?」
「全然。急に呼んで悪かったな」
 僕の目前に現れたのは、あの「田中エッグ買収事件」の田中だった。八年ほど顔を見ていなかったが、未だ彼の「陽キャ感」は健在だった。しっかりと固められた髪。ガタイの良さそうな肩幅。おまけに呼んで数時間で来てしまうそのフッ軽さ。きっと今の環境でも同年代に関わらず可愛がられていることが手に取るように分かった。
「じゃあ、行くか」
 宴もたけなわ。溢れ出る思い出をグッと抑え、僕達は左方向に見える「M」と書かれた赤黄色の店へ歩み始めた。

 数年前『手紙 ~拝啓 十五の君へ~』から着想を得た「十年前の自分から手紙が来る」という作品が大人達にウケた時、僕は思ったのだ。なぜ、大人達はこうも過去を慮り、それを子供にも強いようとするのか。そこまでするほど、過去というのは大切なものなのかと。そう考えた僕は、一つ実験をする事に決めた。
 十年後の僕は、十年前の約束を果たすときにどんな気持ちになるか。
 そうして僕が考えた企画が「十年後。約束した一人に千円マックを奢ってもらう」だった。エモさを確かめるためなのだから、それこそ手紙やら、あの日負けたこの場所に再びやら、そういう感動ものの企画にすれば良いものを。ちゃっかり奢ってもらおうとしているのが自分の小狡さが出ていてそれはそれで良い気がした。田中に白羽の矢が経ったのは、単にこういうしょうもない企画に参加してくれそうなフッ軽な人間が田中であっただけだった。
「悪いな、奢ってもらっちゃって」
「いいよ。そういう約束だからな」
 田中はダブルチーズバーガーのセット二つと、単品のポテトMサイズを持って席に戻ってきた。単品のポテトは、最大の功労者である妹へのプレゼントとして買ってもらったものだ。
「で、どうだった。感動したか?」
「うーん。やっぱり田中じゃあんまり感動しねぇかな」
 実際、僕はそこまでの感動を覚えてはいなかった。数時間前、大人になって少し過去を振り返る良さが分かった気がするなどと格好つけていたが、やはり僕はまだまだ子供の様である。
「で、田中は今何してんの? 羽振り良いしやっぱいい職ついてるんじゃないか?」
「全然、ただの会社員だよ。生活も苦しくて仕方ねぇー」
「何だよ、じゃあやっぱ奢らせるのは良くなかったな」
「普通の会社員でも、マック奢るぐらいわけないって。それにさっきから言ってるだろ。約束だって」
 高校時代、僕と田中はそこまで仲良くはなかった。それこそ、せいぜい「田中エッグ買収事件」のドラマを作る際に軽くインタビューをしたぐらいのものだったのだが。僕は田中の言葉を聞いた後、胸が熱くなった様な気がした。彼には天性の人たらしの才能があるようだ。
「ま。それもお前の仕事次第だけどな。もし俺よりいい仕事についてるようだったら、今すぐ千円返してもらうからな。」
 僕は辺りを見渡した。午後7時半という晩飯時だというのに、周りには殆ど客が見えなかった。せいぜい奥のカウンターで、大学生ぐらいの男性がイヤホンをつけながら課題をしているぐらいだ。ここしかない。僕は一白間を開け、田中の問いに答えた。
「実は……俺、お笑い芸人なんだよね」
「芸人!? まじで?」
「まじまじ。大マジ」
 実は、田中を呼んだ理由はもう一つあった。売れないお笑い芸人である僕はここ数週間、殆ど仕事もなく退屈な日々を過ごしていた。自分には才能がないのではないか? そう考えた事も少なくはない。なのでここは一度ゲラである田中を笑わせて、自分の自尊心の回復を図ろうという魂胆なのだ。
「せっかくだし、なんかギャグやろうか?」
 まるで誘導するかの様に僕はそう切り出した。田中の「頼む!」という声が聞こえてくるのは火を見るより明らかだった。
「では私が喋りますので、あなたは『へぇ、何のために?』と返してください」
 まるで『笑点』の司会者の様に段取りを進める。田中はまるで高校生の時の様な、ワクワクした笑顔でこちらを見つめている。
「この前さ、庭で穴を掘ってたんだけど…」
「へぇ、何のために?」
「いや、特に理由はないんだ。ただの『ホリデー』ってね!」

 田中は吹き出した。口の中にあったポテトチップスは唾液と共に全方向に飛び散り、その勢いはとても人間が飛ばしたものとは思えなかった。その中の一つ、食いかけのポテトは空を飛び、円を描き、あの時の様に僕の顔面に付着したのだった。
最後の渾身のギャグは、この小説の元ネタの一人に考えてもらいました。
花冷
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コメント



0.簡易評価なし
1.80インマヌエル削除
面白かったです。こういう考えられた構成で、ちょっとしたミステリーのように伏線を回収していく物語は個人的にとても好きなので、他の作品も見てみたくなります。
2.100鬼氏削除
とても面白かったです!!!!!!
3.80削除
こういう後半に伏線を回収していく構成好き。
4.100v狐々削除
とても面白かったです。オチも綺麗だった。文体自体が面白く、その形のまま青春を語ってくれたのも良かった。