zorozoro - 文芸寄港

コアラ

2024/05/18 20:59:43
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 あら、もう暗くなってきましたね。話し疲れてきましたし、そろそろ終わりにしたいのですが……まあ、あと少しと言ったところですかね。そんなに面白い話ではありませんが、どうであろうと貴方には関係ないことですか。

 私が初めて彼女と出会ったのは、中学一年の時でしたかね、いつも学校帰りに通る道が工事をやっていて使えなかったんです。仕方がないので迂回しましたよ、すると、どこかからにゃーにゃーと声が聞こえてきたんです。声、ですよ。人間の声で、にゃーにゃーと。私は、その声に引き寄せられるようにして、通ったことのない道を進んでいきました。灯油タンクの陰にいましたよ、しゃがみこんで猫に話しかけている女の子が。

 私に気が付いた彼女は、それはもう猿のように顔を赤くしてしまいました。それを見た私はなんというか、意地悪な気持ちになってしまいましてね。学校のみんなに言っちゃおうかな……なんて脅かしてみたんです。そうしたら、それだけは許してくれと懇願されました。悪い奴だって思いました? ちゃんとその後に「冗談だよ、何を話していたのか教えて」って言いましたよ。少しばかり、変な気が起きるのを抑えながら。そうしたら彼女、ぱあっと顔を明るくして、彼女にとっての秘密を嬉しそうに話してくれたんです。動物と話すことが出来るんだってね。

 彼女は片親でね、お父さんは仕事で忙しいようで、いつも寂しく過ごしていたんだとか。でもある日、彼女のお母さんの誕生日に、動物と話せるようになったんだとか。寂しい気持ちがそうさせたんですかね?
 ……おっと、そんなに眠たそうにしないでくださいよ。そんな態度をされちゃあ、話し手としては面白くないじゃないですか。

 それからの放課後は彼女と過ごすことが多くなりましたよ。私は彼女と遊ぶのは別に楽しくありませんでしたが、さよならを言って別れる時の彼女がする寂しそうな顔は好きでした。その顔を見るたびに、腹の底に溜まる重いものを引きずって帰っては、自分を慰めていました。

 ついこないだの事です。彼女が、森の中でコアラを見つけたと言って喜ぶのです。とても物識りで、話すのが好きだって。そんな嬉しそうな顔を見て、私はなんだか苛立ってしまいました。じゃあ、私なんかじゃなくって、コアラのところに行けばいいじゃない、なんて言ってしまったのです。

 そうしたら彼女が、初めて会った日みたいに足に縋り付いてくれるんじゃないかって、それに乗じて、遂に彼女を汚してしまおうなんて思っていました。でも違った。彼女は言ったんです。

 「それがね、コアラさんって沢山寝ていないと死んじゃうらしくってね。ずっとお話ししていると体に良くないんだって」……って。

 私は怒ったフリをして離れていきましたが、内心焦っていました。このままでは彼女が私のもとを離れてしまうのではないかって、どうやって仲直りをしようって。

 そこで、楽なやり方を思いついたんですよ。
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v狐々
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コメント



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1.100べに削除
語りの良さが出てた。邪魔者って消すのが一番手っ取り早いよね!!!
関係のない話しと言っておきながら殺意が内包されていることに気が付くような仕掛けあってよかったです。
3.90鬼氏削除
いいですね、1200字に収まる物語として非常に良き