いいニュースと悪いニュース、どっちから聞きたい?
スキップしながらの下校中。幼馴染の海ちゃんと一緒の私は、道行く人全員にそう聞いてしまいそうな気分だった。
女の子は毎日ニュースを持っているけど、今回は特別だ。肩から少しズレ落ちたランドセルを背負い直すと、ニュースの内容を思い出しながら頬を緩めた。
悪いニュースは体重計が壊れちゃったこと。乗ったら前よりもずぅっと増えてた。おかしいよね? 前に量ってからまだ一週間しか経ってないのに。
でも肝心なのはいいニュースの方。聞かれなくたって答えちゃいたい。
なんとワタクシ味見秋。この度! 学校でやる劇のお姫様に選ばれたのです!
しかもラッキーなのはそれだけじゃなくて――
「秋。いい加減にやけすぎ」
「だってあの雪くんが王子様なんだもん!」
私が憧れている雪くんは、黒くて短い綺麗な髪で雪みたいに白い肌の女の子。うちは女子校なこともあり、かっこよくて優しい彼女はプリンスと呼ばれている。
ため息をつく海ちゃんと分かれて家に入ると、お母さんが出迎えてくれた。
「お帰りなさい。手洗いうがいしたらオヤツね」
「はーい!」
今日は何のオヤツか考えながら洗面台で用を済ませた。ふと、今朝乗った体重計が目に入る。ついでに乗ってみたが結果は変わらない。
「お母さーん。これ壊れてるよー」
朝に言い忘れていたかもだし、念の為聞いておこう。
私の声に呼ばれたお母さんは、体重計を見るなり不思議そうに目を丸くした。
「あら? これ壊れてないわよ」
今度は私の方が目を丸くした。試しに乗ってもらったが、確かにまぁ違和感はない。
え、待ってどうしよう。つまりこれって……
「秋がただ重くなっただけね。良いのよ。成長したら自然と痩せちゃうし、今のうちにいっぱい食べないと」
容赦の無い言葉に槍が刺さった気持ちになる。悪いニュースが最悪のニュースに変わった瞬間だ。
「どうしよう……」
劇には王子様からお姫様抱っこされるシーンがある。相手はいくらプリンスと呼ばれていても女の子だ。重すぎて持ち上がらないのも嫌だし、雪くんに重いって思われるのも絶対に嫌!
「決めた! 私ダイエットする!」
そう宣言はしたけれど、テーブルに置かれたケーキは無視ができない。何とかすぐに消したものの(お腹の中へだけど)、今度はお菓子箱が目に入ってしまった。和菓子なら低カロリーという言葉が頭で反復されていく……
ああどうしよう。君に好かれてしまった。
私はこんなに離れようとしているのに、お菓子が離してくれない。
――――――――
あれから体重計の数字も変わらないまま本番になっちゃった私は……
「秋さんって軽いね。羽根みたいだ」
「それほどでも無いです。センセイ」
劇当日に風邪で休んでしまった雪くんの代わりに担任の先生が王子様をやってくれたおかげで、重さがバレることは無かった。けど!
これっていいニュース? 悪いニュース?
スキップしながらの下校中。幼馴染の海ちゃんと一緒の私は、道行く人全員にそう聞いてしまいそうな気分だった。
女の子は毎日ニュースを持っているけど、今回は特別だ。肩から少しズレ落ちたランドセルを背負い直すと、ニュースの内容を思い出しながら頬を緩めた。
悪いニュースは体重計が壊れちゃったこと。乗ったら前よりもずぅっと増えてた。おかしいよね? 前に量ってからまだ一週間しか経ってないのに。
でも肝心なのはいいニュースの方。聞かれなくたって答えちゃいたい。
なんとワタクシ味見秋。この度! 学校でやる劇のお姫様に選ばれたのです!
しかもラッキーなのはそれだけじゃなくて――
「秋。いい加減にやけすぎ」
「だってあの雪くんが王子様なんだもん!」
私が憧れている雪くんは、黒くて短い綺麗な髪で雪みたいに白い肌の女の子。うちは女子校なこともあり、かっこよくて優しい彼女はプリンスと呼ばれている。
ため息をつく海ちゃんと分かれて家に入ると、お母さんが出迎えてくれた。
「お帰りなさい。手洗いうがいしたらオヤツね」
「はーい!」
今日は何のオヤツか考えながら洗面台で用を済ませた。ふと、今朝乗った体重計が目に入る。ついでに乗ってみたが結果は変わらない。
「お母さーん。これ壊れてるよー」
朝に言い忘れていたかもだし、念の為聞いておこう。
私の声に呼ばれたお母さんは、体重計を見るなり不思議そうに目を丸くした。
「あら? これ壊れてないわよ」
今度は私の方が目を丸くした。試しに乗ってもらったが、確かにまぁ違和感はない。
え、待ってどうしよう。つまりこれって……
「秋がただ重くなっただけね。良いのよ。成長したら自然と痩せちゃうし、今のうちにいっぱい食べないと」
容赦の無い言葉に槍が刺さった気持ちになる。悪いニュースが最悪のニュースに変わった瞬間だ。
「どうしよう……」
劇には王子様からお姫様抱っこされるシーンがある。相手はいくらプリンスと呼ばれていても女の子だ。重すぎて持ち上がらないのも嫌だし、雪くんに重いって思われるのも絶対に嫌!
「決めた! 私ダイエットする!」
そう宣言はしたけれど、テーブルに置かれたケーキは無視ができない。何とかすぐに消したものの(お腹の中へだけど)、今度はお菓子箱が目に入ってしまった。和菓子なら低カロリーという言葉が頭で反復されていく……
ああどうしよう。君に好かれてしまった。
私はこんなに離れようとしているのに、お菓子が離してくれない。
――――――――
あれから体重計の数字も変わらないまま本番になっちゃった私は……
「秋さんって軽いね。羽根みたいだ」
「それほどでも無いです。センセイ」
劇当日に風邪で休んでしまった雪くんの代わりに担任の先生が王子様をやってくれたおかげで、重さがバレることは無かった。けど!
これっていいニュース? 悪いニュース?