それは濃い黒色をしていた。顔の横に当てられ、ひんやりとした感触が肌を走る。
「チェックメイトです。それでは。」
その言葉と共に僕はその場で頭から派手にクラッカーを鳴らし、倒れた。
◇◆◇
「もし、生まれ変わるとしたら何になりたいですか?」
聞き覚えのある質問。僕は目を疑った後で、時計を見る。3月21日の10:52分。
間違いない。あの日に戻っている。一瞬夢かと思ったが、それは違うと分かっている。だって横には相棒がいるから。
「そうだな……。またここに戻ってきたいな。そんで『ミルエル』。君と一緒にまた暮らしたいな。」
「なんですか、その死ぬみたいな言い方は。この『ミルエル』がついています。鋼鉄の体でお守りしますよ。」
この『ミルエル』は本部から僕に与えられた護衛ロボットだ。僕たち『狩猟人』には、『ミルエル』のような個別の護衛ロボットが一体は必ずつくのだ。
ただ、ここまでちゃんと感情の乗った会話ができるロボットは他にはいないだろう。なぜなら、僕が改造を加えたからだ。
『ココロユニット』という装置を利用して、他の護衛ロボットには無い『感情』を埋め込んだ。
その『感情』によって、『ミルエル』は僕と感情を込めて会話ができる。
「なぁ、『ミルエル』よ。お前は僕の意図していないことが起こったとしても命令を守ってくれるか?」
フラッシュバック。つい数秒前までの記憶。目の前にいるリカラーされたかのような色のロボット。
色が違うだけ。そう思いたいが、この『ミルエル』は雇い主によってボディの色が変わる。
信じたくはないが、それによってあの色になってしまったのだとしたらあの景色にも納得できる。
「当たり前じゃないですか。この『ミルエル』はご主人様を捨てたりなどは断じて致しません。ご安心ください。」
その言葉を何も知らなかったら僕は信じているだろう。しかし、あの光景を見た今、僕はその言葉を信じられずにいる。
「そうか……それならよかったんだけど……。」
30分後には例のミッションが始まってしまう。既に敵の罠も仕掛けられており、こちらはなす術もなく散っていくしかなかった。
もちろん僕もその1人で、『ミルエル』もそこで失った。
「なぁ、『ミルエル』。もし僕の話を信じてくれるなら、1つだけ聞いて欲しい話がある。」
「なんでしょう、ご主人様?」
僕は30分後に起こること、そしてその顛末を話した。
「そんなことが……。この『ミルエル』がご主人様を銃殺するなど……。一生の不覚です。」
そう言ってミルエルはしょんぼりとするように体を少し前のめりにダランとさせる。
「だから、そこで提案があるんだ。今から本部には内緒で相手の基地を奇襲しに行く。」
「なるほど!先手を打てばもしかしたら最悪の事態は防げるかもしれないということですね!さすがはご主人様です!」
「そうと決まれば……。」
僕は手に持っているトランクを路地裏に入り、開く。
手持ち発射型ドリル1つに、盾が一枚。
「よし、『ミルエル』も着替えるぞ。こっち向いて!」
ミルエルに『強化アーマー』を着けていく。遠くの街では『堕天使』というのを倒すのに使われているらしいが、この地域では武装したギャングである『流星団』を倒すために用いられている。
人間に使用すると悪影響が出るというのが本部からのデータでわかっているので、僕たちはこうしてロボットの外付けアイテムにすることによって悪影響の効果を無くしているのだ。
「アーマーの装着を確認。損傷なし。問題ありません。自動痩身レポートをブロック。秘密作戦に移行します。」
『ミルエル』と共に作戦を行う予定の建物へと潜入していく。警備は甘いのかスッスと突破することができた。
敵は居ても2人か3人で『ミルエル』のワイヤーの巻き付けで捕まるような弱い敵ばかりだった。
「この扉だ……。ここを超えてからお前はおかしくなったんだ。気をつけて行こう……。」
「ご主人様、提案があります。」
「どうした?」
「今だけ強化アーマーをご主人様が着てください。このアーマーは体に害を与えるといわれてはいますが、分析によるとそれはパワー解放たるものをした時らしく、それは一定の決まった人にしかできないようになっているみたいです。」
つまり、僕が着ても問題はないということらしい。ただ、それをしてしまうと『ミルエル』はただのロボットになってしまう。
「あぁ、ご主人様は今僕の心配をしましたね?そんなこともあろうかと。こちらを授けておきますね。」
『ミルエル』が取り出したのはUSBメモリのような見た目のもの。何かのバックアップ装置だろうか。
「ここには今までのご主人様との全ての記録が入っています。もし何かあったら僕のことを破壊して組織に新しくこのメモリを渡してロボットを作ってもらってください。『ココロユニット』がもう1つあるのは知っていますからね……?異性なんかよりも2体目の『ミルエル』を作る方がよっぽどいいですよ。」
お見通しです。とでもいうように『ミルエル』は僕に向かって親指を立ててくる。
「全部バレてたって訳か……。」
逆行をする前はこんなにゆっくり話す暇もなかった。少しでもこうやって自由に話しながら任務をするのも悪くないかもしれない。
「なぁ、『ミルエル』。これが終わったら2人で組織から逃げよう。フリーでこういう仕事をするんだ。もっと自由に、気楽に。」
「それはいいアイデアですね!ご主人様。それで持って昔ご主人様が言っていたビーチに家を建てるというのもしましょう。今のあのボロい宿舎は『ミルエル』も嫌いです。」
「だよな。だから頑張ろうぜ……。未来のためにも。」
そう言ってドアを開ける。
激痛。突然体に電気のようなものが駆け巡る。
「ご主人様!?あぁ!強化アーマーが勝手に解放状態に……!」
「おやおや……予定よりも早くかぎつけられちまったか……。だが、これでいい。」
奥から誰かが歩いてくる。
「分析中……。種族『堕天使』名前『不明』階級『一級』総合実力『S』集団戦を推奨します。」
そんなのは分かっている。体が動かないのだ。
「名前以外は的確に当てるとはね……。そちらのロボット、普通とは違うようで。あぁ、申し遅れました。私『サタン』と申します。以後お見知り置きを。」
そう言う『サタン』に『ミルエル』は容赦無くパーツの1つである銃を発砲する。
「はっ!やりやがったなぁ!ならこっちも全力で行かないとだなぁ!キヒヒッ!」
そう言って『サタン』は背中から羽を生やす。
「キヒヒッ!この動き、あなたに当てられますか?」
『サタン』は背中から生えた羽でブンブンと空を飛んでいる。
『ミルエル』もフックで引っ掛けようと応戦しているがいつもギリギリで避けられてしまう。
「キヒヒッ!甘いですよ!ちなみに、あなたのご主人様はあと30秒くらいで死んじゃいますよ?助けた方がいいのでは?私は待ってあげますから。」
既視感。どこか聞き覚えがある。しかし、思い出せない。
『ミルエル』がアームを伸ばして僕の強化アーマーを剥がそうと手をつける。
その瞬間、思い出した。
「『ミルエル』アームを離せ!」
しかし、時すでに遅し。強化アーマーに流れていた高電圧は全て『ミルエル』へと流れていく。
色はみるみると変わっていき、真っ黒になる。
「キヒヒッ!成功だ!乗っ取れたぞ!」
そうだ。こうやって負けたんだった。前回、突入したときはアーマーの交換こそしてはいないものの、同じようなやり方で『サタン』に負けたのだ。
『ミルエル』が備え付けのアーム銃をこちらへと向けてくる。
「あぁ、ビーチに家を作るのはまだまだ先か……。」
引き金が引かれる音がする。自分の頭で破裂するクラッカー。
「もし、生まれ変わるとしたら何になりたいですか?」
そのロボットは濃い黒色をしていた。
「チェックメイトです。それでは。」
その言葉と共に僕はその場で頭から派手にクラッカーを鳴らし、倒れた。
◇◆◇
「もし、生まれ変わるとしたら何になりたいですか?」
聞き覚えのある質問。僕は目を疑った後で、時計を見る。3月21日の10:52分。
間違いない。あの日に戻っている。一瞬夢かと思ったが、それは違うと分かっている。だって横には相棒がいるから。
「そうだな……。またここに戻ってきたいな。そんで『ミルエル』。君と一緒にまた暮らしたいな。」
「なんですか、その死ぬみたいな言い方は。この『ミルエル』がついています。鋼鉄の体でお守りしますよ。」
この『ミルエル』は本部から僕に与えられた護衛ロボットだ。僕たち『狩猟人』には、『ミルエル』のような個別の護衛ロボットが一体は必ずつくのだ。
ただ、ここまでちゃんと感情の乗った会話ができるロボットは他にはいないだろう。なぜなら、僕が改造を加えたからだ。
『ココロユニット』という装置を利用して、他の護衛ロボットには無い『感情』を埋め込んだ。
その『感情』によって、『ミルエル』は僕と感情を込めて会話ができる。
「なぁ、『ミルエル』よ。お前は僕の意図していないことが起こったとしても命令を守ってくれるか?」
フラッシュバック。つい数秒前までの記憶。目の前にいるリカラーされたかのような色のロボット。
色が違うだけ。そう思いたいが、この『ミルエル』は雇い主によってボディの色が変わる。
信じたくはないが、それによってあの色になってしまったのだとしたらあの景色にも納得できる。
「当たり前じゃないですか。この『ミルエル』はご主人様を捨てたりなどは断じて致しません。ご安心ください。」
その言葉を何も知らなかったら僕は信じているだろう。しかし、あの光景を見た今、僕はその言葉を信じられずにいる。
「そうか……それならよかったんだけど……。」
30分後には例のミッションが始まってしまう。既に敵の罠も仕掛けられており、こちらはなす術もなく散っていくしかなかった。
もちろん僕もその1人で、『ミルエル』もそこで失った。
「なぁ、『ミルエル』。もし僕の話を信じてくれるなら、1つだけ聞いて欲しい話がある。」
「なんでしょう、ご主人様?」
僕は30分後に起こること、そしてその顛末を話した。
「そんなことが……。この『ミルエル』がご主人様を銃殺するなど……。一生の不覚です。」
そう言ってミルエルはしょんぼりとするように体を少し前のめりにダランとさせる。
「だから、そこで提案があるんだ。今から本部には内緒で相手の基地を奇襲しに行く。」
「なるほど!先手を打てばもしかしたら最悪の事態は防げるかもしれないということですね!さすがはご主人様です!」
「そうと決まれば……。」
僕は手に持っているトランクを路地裏に入り、開く。
手持ち発射型ドリル1つに、盾が一枚。
「よし、『ミルエル』も着替えるぞ。こっち向いて!」
ミルエルに『強化アーマー』を着けていく。遠くの街では『堕天使』というのを倒すのに使われているらしいが、この地域では武装したギャングである『流星団』を倒すために用いられている。
人間に使用すると悪影響が出るというのが本部からのデータでわかっているので、僕たちはこうしてロボットの外付けアイテムにすることによって悪影響の効果を無くしているのだ。
「アーマーの装着を確認。損傷なし。問題ありません。自動痩身レポートをブロック。秘密作戦に移行します。」
『ミルエル』と共に作戦を行う予定の建物へと潜入していく。警備は甘いのかスッスと突破することができた。
敵は居ても2人か3人で『ミルエル』のワイヤーの巻き付けで捕まるような弱い敵ばかりだった。
「この扉だ……。ここを超えてからお前はおかしくなったんだ。気をつけて行こう……。」
「ご主人様、提案があります。」
「どうした?」
「今だけ強化アーマーをご主人様が着てください。このアーマーは体に害を与えるといわれてはいますが、分析によるとそれはパワー解放たるものをした時らしく、それは一定の決まった人にしかできないようになっているみたいです。」
つまり、僕が着ても問題はないということらしい。ただ、それをしてしまうと『ミルエル』はただのロボットになってしまう。
「あぁ、ご主人様は今僕の心配をしましたね?そんなこともあろうかと。こちらを授けておきますね。」
『ミルエル』が取り出したのはUSBメモリのような見た目のもの。何かのバックアップ装置だろうか。
「ここには今までのご主人様との全ての記録が入っています。もし何かあったら僕のことを破壊して組織に新しくこのメモリを渡してロボットを作ってもらってください。『ココロユニット』がもう1つあるのは知っていますからね……?異性なんかよりも2体目の『ミルエル』を作る方がよっぽどいいですよ。」
お見通しです。とでもいうように『ミルエル』は僕に向かって親指を立ててくる。
「全部バレてたって訳か……。」
逆行をする前はこんなにゆっくり話す暇もなかった。少しでもこうやって自由に話しながら任務をするのも悪くないかもしれない。
「なぁ、『ミルエル』。これが終わったら2人で組織から逃げよう。フリーでこういう仕事をするんだ。もっと自由に、気楽に。」
「それはいいアイデアですね!ご主人様。それで持って昔ご主人様が言っていたビーチに家を建てるというのもしましょう。今のあのボロい宿舎は『ミルエル』も嫌いです。」
「だよな。だから頑張ろうぜ……。未来のためにも。」
そう言ってドアを開ける。
激痛。突然体に電気のようなものが駆け巡る。
「ご主人様!?あぁ!強化アーマーが勝手に解放状態に……!」
「おやおや……予定よりも早くかぎつけられちまったか……。だが、これでいい。」
奥から誰かが歩いてくる。
「分析中……。種族『堕天使』名前『不明』階級『一級』総合実力『S』集団戦を推奨します。」
そんなのは分かっている。体が動かないのだ。
「名前以外は的確に当てるとはね……。そちらのロボット、普通とは違うようで。あぁ、申し遅れました。私『サタン』と申します。以後お見知り置きを。」
そう言う『サタン』に『ミルエル』は容赦無くパーツの1つである銃を発砲する。
「はっ!やりやがったなぁ!ならこっちも全力で行かないとだなぁ!キヒヒッ!」
そう言って『サタン』は背中から羽を生やす。
「キヒヒッ!この動き、あなたに当てられますか?」
『サタン』は背中から生えた羽でブンブンと空を飛んでいる。
『ミルエル』もフックで引っ掛けようと応戦しているがいつもギリギリで避けられてしまう。
「キヒヒッ!甘いですよ!ちなみに、あなたのご主人様はあと30秒くらいで死んじゃいますよ?助けた方がいいのでは?私は待ってあげますから。」
既視感。どこか聞き覚えがある。しかし、思い出せない。
『ミルエル』がアームを伸ばして僕の強化アーマーを剥がそうと手をつける。
その瞬間、思い出した。
「『ミルエル』アームを離せ!」
しかし、時すでに遅し。強化アーマーに流れていた高電圧は全て『ミルエル』へと流れていく。
色はみるみると変わっていき、真っ黒になる。
「キヒヒッ!成功だ!乗っ取れたぞ!」
そうだ。こうやって負けたんだった。前回、突入したときはアーマーの交換こそしてはいないものの、同じようなやり方で『サタン』に負けたのだ。
『ミルエル』が備え付けのアーム銃をこちらへと向けてくる。
「あぁ、ビーチに家を作るのはまだまだ先か……。」
引き金が引かれる音がする。自分の頭で破裂するクラッカー。
「もし、生まれ変わるとしたら何になりたいですか?」
そのロボットは濃い黒色をしていた。
まずはプロットを詰めていくところから考えるのがおすすめかなという感想です。
次も読みたいです。