zorozoro - 文芸寄港

いつもと違って、見られたい

2024/04/17 21:38:20
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「ねぇ、私、いつもと違うの。どこが変わったか分かる?」
「……ちょっと太った?」

   *

 目が覚めると保健室のベッドの上だった、どうやら気絶していたらしい。
 それにしても胴回し回転蹴りとは……口の中から血の味がする。時計の針は五時を指しており、窓からは茜色の空が覗いていた。

「起きたんだ、永遠に寝ていればよかったのに」

 ソファに腰かけて頬を膨らませているのは、幼馴染の鴇子(ときこ)であった。

「許してよ」
「やだ」
「ほんの冗談だって、僕と君の仲じゃないか」

 こうなると鴇子は手が付けられない、付き合いが長いから分かる。一週間は機嫌を取り続ける必要がある……と思っていたのだが、今回は何がお気に召したのか、少し態度をやわらげた。

「……それもそうね、じゃあチャンスをあげる。次よ、次の一回で、どこが変わったか当てたら許したげる」
「蹴ったことも謝ってくれる?」
「知らないわよ、あんたが勝手に倒れたの」

 鴇子は僕の脛をゲシゲシと蹴った、人を傷つけるのに遠慮が無い! 次も外したとなると、いよいよ命に係わるだろう、僕は両目を擦って鴇子へと向き直った。
 まず怪しいのは髪だろうか、鴇子は肩口に届かない程度のミディアムヘアで、髪留めを付けたりはしていない。だが、前髪を切っていたりするかもしれない。待てよ、シャンプーを変えたという線は無いだろうか! この艶やかな髪だ。よっぽど丁寧に手入れをしているはず。

「髪の毛嗅いでいい?」
「本当に殺すわよ」

 確かめるのは無理そうだ、あるいは命と引き換えになるだろう。
 顔はどうだろうか、鴇子の顔を真正面に据える。きりっとした瞳に、長い睫毛が影を落としている。化粧は校則で禁止されているけど、もしかしたら色付きリップをしていたりするかもしれない。それにしても整った顔立ちだ、鼻筋はシャープなのに対し、ぷるっとした瑞々しい唇が可愛らしい──などと考えていると、鴇子は不意に口を開いた。

「ねえ、空(そら)」

 僕の名前だ。

「今、結構、顔近いわね」

 そう囁かれた途端、ふわりと良い香りがして……僕の心臓は動作不良を起こしたみたいにどくどくと鳴りだした。そのせいだ、つい、ぽつっと零してしまったのは。

「……ちょっと可愛くなった?」

 鴇子は真顔を崩さない。沈黙が続く中、やってしまったかなと思い始めたころ、鴇子は口を開いた。

「はぁ、二十点ね。でも悪くない気分だし、もういいわ」

 あっさりした返答だった。僕はといえば、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていただろうと思う。

「こんなこと言ったら、いつもは怒るじゃん」
「まあ、そろそろ私が女の子だってさ、気が付いてくれても良いんじゃないかなって」
「なんだよそれ」

 鴇子は「ばーか!」といって外へ向かって歩き出した。滅茶苦茶だと思ったけど、夕陽に照らされた笑顔がとても輝いて見えたので、僕はいつも通り、横に並んで帰路へ着いた。

「本当はどこが違ったのさ」
「あんたのパンツ履いてんの」
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コメント



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1.80べに削除
いつもと違う…パ……パンツかあ。このテンポが1200でエンタメをするのの手本になるのかなと思いました。
2.70🦭削除
5時の保健室にいる状況で起こり得ることや二人のバストアップ以外で起きている寿王教があると解像度が増し増しになるのかなと思ったり。
3.80鬼氏削除
いいっすね、良いクオリティです。
4.80削除
意外性というか、やられたって感じ